コーポラティブ方式による住宅作り
マンションは、「デベロッパーがつくったものを買う」というのが"常識"でしたし、まだまだ "分譲マンション"が大量につくられていますから、今でも"常識"なのかも知れません。
しかし、この"常識"を変える可能性のある方法があります。一生に一度の"買い物"といわれているマイホームを取得するのに、コーポラティブ方式という事業手法によって、「自分たちでマンションをつくる」方法です。
自分たちでつくつマンション
この方法は、マイホームを欲しい人たちが集まって、民法に規定されている「組合」をつくり、建設資金などを出し合って土地を手に入れ、マンションの建設工事を発注する、というものです。
でも、専門家でない人たちだけでは、この事業のスタートから入居するまでを円滑に進めることは大変むずかしいことになります。そこで、事業を企画・推進するコーディネーター、設計・監理をする建築設計者、建築工事を行う施工会社などが、お手伝いをしてマンションを建設することになります。
事業の主役は、あくまでもマイホームを欲しい人たちですから、その方たちが設立する組合(大抵"建設組合"と称します)による事業となり、これをコーポラティブ方式(組合方式といってもよい)といっています。
コーポラティブ方式のよさ
何事にもよいところも悪いところもありますが、コーポラティブ方式の悪いところは、次のような点です。
① 組合員自らが事業の責任を負うこと。
分譲マンションは、できあがりを買うので、できあがるまでの責任はすべてマンションデベロッパーにあります。しかし、分譲マンションをつくるのはデベロッパーですから、「買う」人の都合は二の次、三の次ということになります。
「組合員自らの責任」は大変なことですが、別の視点から見ると組合(組合員の総意)が何でも決められるということになります。
② 大変手間のかかるマイホーム取得の方法であること。
専門家集団がしっかり準備しても、1年半以上の時間を要し、その間に20回以上の会合(設計打ち合わせ、総会、共用部分をどうするか・管理をどうするかの検討会など)が予定されています。そういう意味では、組合員も大変ですが、設計者も、施工者も、そしてコーディネーターにとっても大変手間のかかる作業です。
悪いところとしたことと、次のようなよいところとを比較検討して、よいところを評価できない人には、「コーポラティブ方式による住宅づくり」に参加することはお勧めできません。
① 自分たちの責任でつくるマンションなので、それぞれの住宅の中(専有部分)は自由設計です。
もちろん、「自由」には「法律違反ではない。」、「他の家に迷惑をかけない。」、「技術的に可能である。」ことなどの「限界」がありますが、大多数の方が気に入る間取りを用意する分譲マンションと違って、組合員とその家族がどう暮らしたいかを設計に反映させることができます。
これは、悪いところ①の裏返しでもあります。
② 取得費は、土地代、工事費(解体費、建築費など)、設計・監理費、コーディネート費などで、費用の積み重ねであり、一般的には取得費は「安く」なります。
これも悪いところ①の裏返しで、事業に責任を負うデベロッパーは、それに見合う儲けをしっかり確保しないと企業を維持できないのですが、自分たちの責任でつくるマンションですから、費用の内訳はすべてガラス張りになります。
③ マンションをつくる前から入居者が決まっていて、途中、マンションの完成、入居までに何回も顔を合わせ、言葉も交わしますので、顔見知りばかりのマンションとなり、安心かつ安全に暮らすことができます。
分譲マンションは、できあがったときに一斉に入居してきますし、戸数も多いので、知らない人がほとんど、という状態で暮らしはじめます。「自分のマンションでの知り合いは管理人さん」などという笑えない現実も多いようです。
これは悪いところ②の裏返しですが、「面倒なことは嫌い。」という人は参加してきません。手間をかけてマイホームをつくり、ほどよい距離の人間空間に長く住むという、コーポラティブ方式は、今の時代に求められている住まいづくりの手法といえます。
コーポラティブ方式を共同建替えと組み合わせる
共同建替えは、地権者が必要な区分所有建物を確保し、それ以外の区分所有建物は処分するのが一般的です。これまでは、「デベロッパーに売る」という処分方式、つまり、等価交換方式が有力な方法でした。しかし、事業となる規模が小さければ、デベロッパーは相手にしてくれませんし、取り組むとしてもデベロッパーの都合優先でなければ成り立たない仕組みになっています。
私どもは、神田東松下町のCOMS HOUSEで、共同建替えとコーポラティブ方式を組み合わせるという事業手法を実践しました。
この事業手法は、過疎化の進む都心部などにおいて、地域社会を活性化しようという取り組みに大変有効に働くであろうと考えています。